インターネット広告媒体費の種別構成比に占める割合の多いリスティング広告(検索連動型広告)やディスプレイ広告についての記事を書きましたが、次いで、ここ最近大きく伸長しているのがビデオ(動画)広告です(2020年時点で前年比121.3%3,862億円、インターネット広告媒体費の22%)。2021年には前年比110.4%の4,263億円になると予測されています(引用:電通「2020年 日本の広告費」、D2C・CCI・電通3社共同リリース)。
 そこで今回はビデオ(動画)広告について少し詳しくみていくことにしましょう。

動画広告とは

 動画広告(video advertising)とは、文字や静止画ではなく動画を使用した広告のことをいいます。
「動画を使用した広告」というと、テレビCMや屋外広告(OOH:OUT OF HOME)、電車内に流れる広告などもあり、広義の意味ではこれらも動画広告にあたりますが、狭義の意味では主にインターネット広告で用いられるものを指すことが多く、Web動画広告と呼ぶこともあります。本記事では、このWeb動画広告についてみていきます。

WEB広告の変化と動画広告市場

 企業や一般個人のインターネット利用がはじまった1990年代前半には、今では当たり前のバナーもまだ存在しておらず、テキスト広告がメインでした。当時は通信速度も遅く、画像などリッチなクリエイティブを表示させる事が容易にできなかったことなどもあり、広告の効果もあまり期待できませんでした。
 日本では1996年にYahoo!株式会社が初めてバナー掲載による広告サービスを始めました。その後、iPhoneやiPadによりスマートフォンやタブレット端末の利用が急激に増加するとインターネット広告市場も急激に成長しましたが、主流はバナー広告でした。

 動画広告は2011年ころから登場しましたが、当初は出稿があまりありませんでした。急成長を遂げたのはここ数年で、2017年に1,155億円、2018年に2,027億円(前年比175.5%)、2019年に3,184億円(前年比157.1%)、2020年には3,862億円(前年比121.3%)となっており、2021年には前年比110.4%の4,263億円になると予測されています。   (引用:日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析 2017201820192020)

 従来、動画広告はTVCMの補完としての考え方でしたが、近年では、単に作ってそのまま配信するだけではなく、買ってみた・使ってみたといったような動画コンテンツなど、いかに動画で成果を出すかに変化してきています。さらに広告以外にも、ライブコマースなど生配信で商品やサービスを紹介するだけでなく視聴者がチャットなどでリアルタイムに質問できるような双方向のコミュニケーションがあるものなど多種多彩なものになっています。

動画広告の配信媒体





Youtube   世界で20億人以上(2021年月12月)といわれ、国内でも6,500万人以上(2020年9月)が利用しているといわれています 。
Facebook 世界で約29.1億人(2021年10月)のユーザーを有しており、国内でも2,600万人(2019年7月)以上もの人が利用しています。
実名制を基本としているためターゲティング精度が高いのが特徴です。
Instagram 世界で10億人以上(2019年10月)、国内では3,300万人(2019年6月)の利用者が存在するSNSです。若年層の女性ユーザーの比率が高いため、女性向けの動画広告を配信したい場合に有力なプラットフォームになります。
LINE 世界1億8,900万人(2021年11月)のユーザーの多くは主要4ヶ国(日本・台湾・タイ・インドネシア)にて利用されており、日本国内では国民の半数を超える8,900万人(2021年8月)に利用されています。
メッセージアプリの機能だけでなく、Smart Channel、タイムライン、LINE NEWS、LINE ウォレット、LINEマンガなど、幅広いサービスで動画広告を配信できます。
Twitter 世界で3億3,000万人(2020年10月)に利用されているTwitterは各国の政府機関の首脳すら利用する大手SNSです。日本でも4,500万人(2017年10月)もの人が利用しています。
10代から20代の若年層の利用が多く、その特徴はリツイート機能によるその拡散性の高さです。
TiKToK 世界で約10億人(2021年9月)、国内では1,690万人(2021年10月)のユーザーを抱える比較的新しいショート動画SNSです。
10〜20代の女性ユーザーが多く利用しており、ユーザーのエンゲージメント率に優れたプラットフォームです。
AbemaTV 良質なコンテンツを生み出し、40代前半位までに高い人気を誇るインタネットテレビサービスです。
コンテンツ内容にこだわるだけではなく、広告動画を挟むタイミングにおいても、ユーザーの負担にならないよう配慮しています。
YDN・GDN Yahoo! JAPAN、Googleが運営してるネットワーク内での広告配信です。
それぞれが提携しているサイトやアプリなどに動画広告を配信できますが、広告内容の審査が厳しいので注意が必要です。
 おもな参考文献:
  https://blog.youtube/press/
  https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/video/youtube-recap2020-2/
  https://investor.fb.com/investor-events/default.aspx 
  https://about.fb.com/ja/news/2019/06/japan_maaupdate-2/ 
  https://www.z-holdings.co.jp/ja/ir/news.html
  https://twitter.com/TwitterJP/status/923671036758958080
  https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/1-billion-people-on-tiktok-thank-you
  https://markezine.jp/article/detail/37145 





Youtube広告

YouTube広告は大きく6種類に分けられます。
TrueViewインストリーム広告
  YouTubeで動画を閲覧している際に動画の再生前後もしくは動画再生中に動画コンテンツと同じ場所に流れる広告を指します。
    プレロール 動画本編が始まる前に流れる広告
    ミッドロール 動画本編の途中に挟み込まれている広告
    ポストロール 動画本編が終わった後に流れる広告
  スキッパブル広告 広告再生開始から5秒が経過すると、広告をスキップするオプションがユーザーに表示されます。
  ノンスキッパブル広告 他の動画の再生前、再生中、または再生後に再生される 15 秒以下のスキップできない動画広告のことです。
  【料金体系】スキップ可能なインストリーム広告:CPV 単価制(ユーザーが動画を 30 秒間(30 秒未満の広告の場合は最後まで)視聴したか、30 秒経つ前に動画を操作した場合に料金が発生)
スキップ不可なインストリーム広告:目標インプレッション単価制(広告の表示回数に基づいて課金)
インフィード動画広告(TrueViewディスカバリー広告)
  YouTube上の右側にある関連動画や検索結果一覧に表示される広告です。
動画内では配信されず、広告をクリックすることで再生されます。既に興味を持っているユーザーのアクションによって配信されます。
【料金体系】ユーザーがサムネイルをクリックして広告を視聴した場合のみ課金。
バンパー広告
  最長6秒間のスキップできない広告のことで、インストリーム広告と同様、動画の再生前、再生中、または再生後に流れます。YouTubeとGoogle動画パートナー上のWebサイトやアプリに表示されるため、幅広い層へのブランド認知やリーチなどが期待できます。
【料金体系】目標インプレッション単価制(広告の表示回数に基づいて課金)
アウトストリーム広告
  YouTube内ではなくYouTubeのパートナー認定を受けたWebサイトやアプリで配信されるモバイル専用の動画広告です。Google動画広告を用いて配信することができ、リーズナブルな費用で配信できます。
画面に広告が表示されると音声なしで再生され、タップしてミュートを解除したり、スクロールして動画を飛ばしたり自社のサイトへ誘導したりすることが可能です。
【料金体系】視認可能なインプレッション単価(vCPM)に基づいて請求(動画再生が 2 秒以上視聴された場合にのみ料金が発生)。
マストヘッド広告
  YouTubeのホーム画面最上部に大きく長く表示される動画広告です。新しい商品やサービスの認知度を高めたい場合や、短期間で大規模なオーディエンスにリーチしたい場合(販売イベントなど)に有効です。予約ベースでのみ利用できます。
【料金体系】インプレッション単価(CPM)制。
オーバーレイ広告(PCのみ)
  オーバーレイの画像広告またはテキスト広告が、動画の再生画面の下部 20% に表示されます。動画の再生を止めることなく画面下に小さく表示され、広告の右上に表示されるバツ印をクリックすると広告を消すことができます。
【料金体系】インプレッション単価制。
(引用:YouTubeヘルプ ― 動画広告フォーマットの概要

Facebook広告・ Instagram 広告

Facebook広告を利用することでFacebookをはじめ、Instagram(インスタグラム)やMessenger(メッセンジャー)、Audience Network(オーディエンスネットワーク)への広告配信ができます。
媒体 デバイス おもな表示場所
Facebook PC フィード、右側広告枠
SP フィード、ストーリーズ、インストリーム動画、インスタント記事、Marketplace
Instagram SP フィード、ストーリーズ、インストリーム動画、 発見タブ
Audience Network SP バナー広告、ネイティブ広告、インターステシャル広告、リワード広告
Messenger SP 受信箱、 ストーリーズ、 広告メッセージ
(引用:Metaビジネスヘルプセンター - 広告マネージャでの配置について
Facebook広告の費用は、基本的にはインプレッション制(CPM:Cost Per Mille=表示されるごとに料金が発生)が採用されていますが、
一部のキャンペーンでは、クリック課金(CPC:Cost Per Click=広告がクリックされたときのみ料金が発生する)も選択することができます。主なキャンペーンは下記の通りです。
目的 課金制
ブランド認知度アップ CPM
リーチ CPM
トラフィック CPM ・CPC
エンゲージメント CPM
アプリのインストール CPM ・CPC
動画の再生数アップ CPM ・ThruPlay
リード獲得 CPM
メッセージ CPM
コンバージョン CPM
カタログ販売 CPM ・CPC
来店数の増加 CPM
ThruPlay:動画が15秒以上再生された(15秒以内のものは視聴完了)場合に料金が発生

Twitter広告

Twitter広告は、タイムラインや検索結果に掲載できる広告のことを指します。ユーザーの興味・関心、ツイートや検索に用いるキーワードなど、多彩なターゲティングで広告を配信することができます。また、他のSNSよりも拡散性が高く、引用ツイート、リツイートなどがされることによって二次的な情報拡散が期待できます。

プロモ広告 通常のツイート形式に「プロモーション」というラベルが明示された有料広告です。マーケティングファネル各ステージにて複数の方法で利用でき、ブランド機能を追加するなどカスタマイズも可能です。
画像広告 商品やサービスを1枚の写真で紹介できます。
動画広告 商品を動的に紹介でき、ウェブサイトやアプリに誘導したり、ブランドメッセージへのエンゲージメントを高めることができます。
カルーセル広告 水平方向にスワイプ可能な画像や動画を最大6つ使うことができます。
モーメント広告 一連のツイート作成、まとめ、プロモーションにより、140文字では伝えきれないストーリーで心をつかむコンテンツを作成できます。
テキスト広告 標準的ツイートすべての要素を備え、シンプルかつ自然にTwitterの他のコンテンツに溶け込みます。
フォロワー獲得広告 ターゲティングしたオーディエンスにプロモーションし、認知度向上や新規フォロワー獲得に活用できます。
Twitter Amplify 自社の広告を、最も関連性の高いパブリッシャーによるプレミアムビデオコンテンツと連動させることができます。
Amplifyプレロール 15以上のコンテンツカテゴリーを選択できます。
Amplifyスポンサーシップ 1つのパブリッシャーと1対1で提携関係を結び、キャンペーン期間中はツイート単位で広告を管理できます。
Twitterテイクオーバー広告 タイムラインや [話題を検索] タブの上部に広告を独占的に表示します。
タイムラインテイクオーバー ブランド広告を1日の最初の広告として、会話の一番上に表示します。
トレンドテイクオーバー/
トレンドテイクオーバープラス
トレンドに連動して広告を表示し、[話題を検索] タブで始まる会話にメッセージを表示します。トレンドテイクオーバープラスは、動画クリエイティブ要素を加えます。
Twitterライブ ライブ放送を配信し、オーディエンスはその瞬間にリアルタイムで参加することができます。
Twitterでは、他の5つのフォーマットカテゴリーに適用可能な下記のようなカスタム機能およびブランド機能を提供しています。
  投票 広告に追加できるインタラクティブで人目を引く機能です。
  カンバセーションボタン ブランドのコンテンツについてのツイートを促すボタンを埋め込んで、エンゲージメント(利用者の反応)と会話を促します。ボタンには、コールトゥアクションボタンとカスタマイズが可能なハッシュタグが含まれます。
  ウェブサイトボタン 画像広告と動画広告にクリック可能な機能を追加し、特定のランディングページに誘導する広告枠として機能できるようにします。
  アプリボタン 広告クリエイティブに追加できるクリック可能なボタンで、このボタンにApp StoreやPlay Store内にあるアプリのダウンロードページへのリンクを付け加えることができます。利用者が既にアプリをダウンロードしている場合、モバイル上の特定のアプリを開くように設定することもできます。
  ブランド絵文字 Twitter上でハッシュタグが使われているところでクリエイティブの要素を加えることができます。
  ブランド通知 価値あるコンテンツや体験をブランドから直接提供されるよう利用者が設定できるようになります。
(引用:Twitterプラットフォーム - 広告ヘルプセンター - 広告クリエイティブの仕様 他)

費用は定額で発生せず、下記のようにユーザーが特定の行動を起こした際に発生します。
フォロワー数が増えたとき
 広告を通じてアカウントのフォローが発生した際に課金されます。広告を介さない場合は料金は発生しません。
リンクがクリックされたとき
 広告に連結させたリンクに対してクリックが行われた際に費用が発生します。広告の投稿クリックのみの場合はカウントされません。
動画が再生されたとき
 広告内の動画が再生された際に費用が発生します。
エンゲージメントが発生したとき
 広告に対してコメントやリツイート、いいねなどのアクションがあった際に費用が発生します。
アプリがインストールされたとき
 広告を通してアプリがインストールされた際に費用が発生します。
インプレッションが発生したとき
 広告の表示された回数に基づき費用が発生します。

LINE広告

LINE広告とは、コミュニケーションアプリ LINE が提供する広告です。下記のようなLINE内のサービス上に配信されます。
トークリスト LINE NEWS LINE VOOM ウォレット
LINEマンガ LINEポイント LINE BLOG LINEチラシ
LINEクーポン LINEマイカード LINEショッピング LINE広告ネットワーク
また、広告配信面に応じて下記の5つの広告フォーマットが用意されています。
Card 横長形式で表示され、静止画と動画を用いることができます。トークリストからタイムラインをはじめ、ほとんどの掲載面に対応しているフォーマットです。
Square 正方形の形式で表示され、静止画と動画を利用することができます。
Cardにくらべスマートフォンの画面に大きく表示される広告フォーマットです。
Vertical 動画専用の広告フォーマットです。タイムラインのみに対応しており、画面を専有するように大きく表示されます。
カルーセル 画像をスワイプ可能な形式で、最大10点まで表示できる広告フォーマットです。ユーザーの閲覧履歴に応じて商品を掲載できるダイナミック広告「LINE Dynamic Ads」とタイムラインなど一部の掲載面に配信が可能です。
画像+テキスト トークリスト専用の広告フォーマットです。「画像+タイトル」で構成されます(トークリストにはCardやSquareも表示される可能性がありますが、テキストが途中で省略されたり画像の表示が小さくなります)
広告のターゲットや目的に応じて下記のような配信機能が用意されています。
デモグラフィックデータ配信 年齢、性別、地域、興味関心などでターゲットを指定して配信できます。地域は、特定エリアの半径レベルでのターゲティングも可能です。
オーディエンス配信 ユーザー情報を利用して、配信対象となるユーザーをセグメントできます。
友だち追加 LINE広告を通じてLINE公式アカウントの友だちを獲得する広告です。
LINE公式アカウントの友だちオーディエンス配信 LINE公式アカウントの友だちを元にオーディエンス(配信するターゲット)を作成し、そのオーディエンスへの配信が可能です。
類似配信 コンバージョンオーディエンスやアップロードした顧客情報に類似したユーザーをLINE内で新たに探して配信します。
リエンゲージメント配信 アプリをインストールしたまま休眠状態になっているユーザーを対象に広告を配信し、再起動を促します。
自動最適化配信 LINEのデータベースを利用して、自動で広告入札の最適化を行います。
予約型広告 配信面や期間などの出稿内容があらかじめ定められている広告で、配信後の調整はできません。
(引用:LINE for Business
LINE広告費用はクリック課金とインプレッション課金に分けられます。
クリック課金
 ユーザーが広告をクリックし、リンク先のページに遷移すると課金が発生します。
 広告が表示されるだけでは料金は発生しません。
インプレッション課金
 画面上で動画枠が完全に表示されると料金が発生します。
 スマホ画面上で動画枠が100%表示された状態をインプレッションと呼び、その表示回数ごとに課金されます。

まとめ

今回、動画広告というテーマで記事を書き進めていましたが、動画の主な配信媒体であるSNS側からみると動画以外にもテキストや画像の広告などがありますのでweb広告については多角的視点からとらえることが大切になってきます。まずは、目的、ターゲット層、予算などを総合的に勘案してどこにどのような広告を出すかを決定することです。
とはいえ、ゼロからスタートするには少し敷居が高い部分もあるかと思います。弊社でもWeb広告運用のお手伝いをさせていただいておりますので、お気軽にご相談ください。→こちら