2010年代から2020年代にかけて、再びメタバースが注目を集めるようになります。VRなどの技術の進歩、さらにはNFTと呼ばれるブロックチェーン技術を活用したデジタルアイテムの取引の可能性により、メタバースが現実世界同様のもう一つの世界になる可能性が見えてきたからです。
2021年、Facebookがメタバース実現に向けて本格的に動き出したことにより「メタバース」という用語が業界で再浮上してきます。10月にはFacebookは社名をMeta(メタ)に変更すると発表し、CEOであるマーク・ザッカーバーグ(Mark Elliot Zuckerberg)氏は、以後は新たな社名のもと、仮想空間の構築に注力し、数年内にSNSの企業からメタバースの企業へ変わると宣言しました。
ザッカーバーグ氏は2015年時点で「未来では常に装着していられるデバイスによってコミュニケーションは改善される」と語っており、ユーザーはVRヘッドセットを使って「メタバースにテレポート」して、仮想世界の中でリアルなコミュニケーションをするのだといっています。2021年7月にはメタバースを「次のコミュニケーションプラットフォーム」と位置付け、VR空間についてはHorizonという名称で統一、それまでオキュラス(Oculus)ブランドで展開されてきたVR/AR関連のハードウェアについては、2022年初頭よりMetaブランドへの統合を行っていくそうです。
それに対し、サンフランシスコを拠点とし、Googleからスピンアウトしたスタートアップ企業であるナイアンティック(Niantic)は、AR技術を使って現実の世界とデジタルの世界を融合させ、人々を直接結びつけるという没入型デジタル環境の仮想世界ではない「現実世界のメタバース」を提唱しました。
Nianticの創業者兼CEOであるジョン・ハンケ(John Hanke)氏は、2021年8月以降、VRヘッドセットに拘束されるようなメタバースを「ディストピアの悪夢」と呼んでいます。
人気ARゲーム「ポケモンGO」などの開発を手掛ける同社は、2021年11月にARアプリ開発者向けの開発キット「Lightship ARDK(Niantic Lightship AR Developer Kit)」を公開しました。これは 同社のARゲームの動作基盤となっているプラットフォーム「Niantic Lightship Platform」を他の開発者にも提供してARアプリ開発を後押しするというもので、デベロッパーはそれを利用して新たなプロジェクトを生み出すことが可能です。
これには自力で開発するには相当な手間と労力が必要になる技術を公開することで独立系の開発者がARを活用したアプリを作成することを容易にし、開発者を増やすことで「現実世界のメタバース」というコンセプトを広めていくという狙いがあります。
また同社は、2千万ドル(約22億6500万円)規模のファンドを開設し、Nianticのビジョンに合致する企業に投資します。
ローンチ時点で、すでにコーチェラ・フェスティバル(Coachella Valley Music and Arts Festival)、英国の歴史的王宮を管理する非営利組織Historic Royal Palaces、ユニバーサル・ピクチャーズ(Universal Pictures=ユニバーサル・シティ・スタジオ(Universal City Studios LLC))、全米プロゴルフ協会などのブランドと提携しています。