世界中にコロナが広がって早や2年、ヨーロッパでは新型コロナウイルスの感染が再び拡大しており、日本でも第6波が懸念されています。そんな中、新たな販路開拓の手段のひとつとして「EC」という言葉をよく耳にします。国や自治体もECサイト構築に対し、各種補助金の支援制度を設置しています。
 昔はECと言えば欧州共同体(European Community:のち1993年にEUに発展)でした。また、農業においては電気伝導度/率(Electrical Conductivity)の意味で用いられ、土壌の電気の流れやすさを示す言葉として使用されています。
 WEBの世界ではECという言葉はこれらとはまったく異なる意味で使われています。今回はこのECについて詳しく見ていくことにしましょう。

ECとは

 EC(electronic commerce)は「電子商取引」という意味で、コンピュータネットワーク上での電子的な情報通信によって商品の売買や決済、サービスの契約などの商取引を行うことの総称を指します。「イートレード」とも言い、消費者側からは「ネットショッピング」とも呼ばれています。
 また、ECサイトとはその取引が行われるWEBサイトの事を指します。ネットオークションサイトや有料動画配信サイト、オンライントレードのサイトなども含まれますが、一般的にはこちらもネットショップや通販サイトの方が馴染みがあるかもしれません。
 ECとほぼ同義語として使用される「eコマース」は、electronic commerceに由来する造語で、多くの場合、ネットショップなどの企業と消費者間の取引( B to C )を指すことが多いようです。
 ちなみに経済産業省が毎年行っている電子商取引実態調査ではECの定義は「インターネットを利用して、受発注がコンピュータネットワークシステム上で行われること」とされています。

 電子商取引の歴史は、1976年にアメリカのアテラ・テクノベーション社(Atalla Technovation)およびラモコーポレーション(Ramo Corporation)が、金融会社がオンライン上での安全な取引を行うための製品を売り出したことに遡ります。日本国内では翌1977年、竹内ゆうじという日本人により普及されています。
 1979年にはイギリスのマイケル・オルドリッチ(Michael Aldrich)がオンラインショッピングを発明し、消費者と企業の間または企業と別の企業の間のオンライントランザクション処理を可能にし、デモンストレーションを行いました。後にeコマースとして知られる手法で、これが「初のオンラインショッピング・システム」とも言われることもあります。 
 1989年5月、セコイア・データ社(Sequoia Data Corp.)はコンプマーケット(Compumarket)という買い手がデータベースから商品を検索し、クレジットカードで購入することができるシステムの利用を開始しました。これがインターネットを利用したeコマースシステムとしては最初のものだと考えられています。
 インターネットの発達にともない、1990年代後半から、企業がインターネット(主にウェブサイトなど)を介して不特定多数の消費者に対する小売(いわゆる B to C)が少しづつ広まっていき、さらには、消費者間取引(C to C)が、ウェブサイト上で行われるようになり現在に至っています。


ECサイトの種類、取引の形態

       ピ)ドメインにについてはここを見てくれ
ECサイトは、大きく2つの種類に分かれます。
●モール型EC:
サイト運営者が、サイト内仮想店舗を他の事業者にプラットフォームとして提供するサイト
Amazon、ZOZOなどの「ECサイト」
楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの「ECモール」
●自社EC:
自社ECサイトを制作し、自社の取り扱う商品・サービスを提供・運営するサイト
ユニクロ、ビックカメラ、ニトリなど


EC取引形態は下記の3つに分類されます。
●B to B(Business to Business):
企業が製品やサービスを他の企業に提供するビジネスモデル
●B to C(Business to Consumer):
企業が製品やサービスを直接個人 (一般消費者) に提供するビジネスモデル
●C to C(Consumer to Consumer):
個人が製品やサービスを個人に提供するビジネスモデル


ECサイトのメリット

●利用者のメリット

 ECサイトを利用する消費者側の最大のメリットは、いつでも、どこでも利用できるということです。ECサイト自体には営業時間や休業日がないため、場所や時間に左右されないで、自分の好きな時に、好きなところから注文ができます。わざわざ店舗まで足を運ぶ必要もありません。
 また、WEBならではの機能(定期購入、ネットクーポンなど)が使えることや、かさばる荷物や重い荷物を自ら持ち運ぶことなく宅配業者が自宅に届けてくれることもメリットの一つと言えます。

●事業者のメリット

ECサイトを運営する事業者(店舗)側のメリットは、下記のような点があります。
①EC事業は、実店舗がなかったり小さくても可能です。そのため家賃や人件費などの削減が見込まれます。
②販売エリアが限定されないため、国内はもちろん世界中に販売エリアを広げることが可能です。
③ECサイトは24時間365日アクセスできるので、いつでも注文が受けられます。
④ネットショップの特性上、顧客データや購入情報などのデータが蓄積するため、解析によってマーケティング戦略がより容易になってきます。適切な分析により商品やブランドに合ったターゲット層に的確な情報を提供することや、リピート施策を効率よく展開したりすることによって効率よく集客していくことも可能となります。

ECサイトのデメリット

ECサイトを運営するデメリットは、下記のような点があります。
①WEBサイトの構築、維持のための費用(設備投資)がかかります。
②数多くあるECサイトから顧客に選ばれるような集客方法を考える必要があります。 
③実店舗と比べて、対面で商品の説明をしたり要望を聞いたりすることができないため、お客様とのコミュニケーションが難しく、微細な部分での食い違いが発生しやすくなります。
④他店と比較がしやすいため、価格をはじめ競争が発生しやすくなります。
⑤インターネット回線特有の問題(商取引の安全性保持や消費者保護など)やWEBシステム特有の問題(販売サイトを装ってID/パスワードをはじめとする個人データやクレジットデータなどを騙し取ることが目的のフィッシング詐欺やサイトの改竄や個人情報漏洩、海外取引の場合のトラブル発生など)を抱えています。

まとめ

 店舗がなくても物が売れるとはいえ、サイトの構築や運用には一定の費用がかかります(実店舗のテナント料・内装工事・什器備品に比べれば安いかもしれませんが…)。
 また、数あるネットショップの中での集客・競争においては、単に価格が安いという考え方ではなく、オリジナリティや付加価値、さらには買い物自体の楽しさや利便性なども重要になってきます。ショップが選ばれる時代になっているのです。
 そのためにも顧客情報をどれだけ有効活用できるかが重要になってきます。ただし、個人情報を扱うことは、同時に流出リスクなどをも抱えることになりますので、規模の大小に関わらず顧客データの管理とセキュリティ対策に対する意識と施策が常に必要になってくることを忘れてはなりません。